歯科医が教える。歯磨き剤をつけ過ぎると口の中に悪影響が

「歯磨き剤を歯ブラシ全体にべたっとつけて歯を磨くのは、口の中の衛生にはよくありません」と話すのは、歯学博士で口腔(こうくう)衛生が専門の江上歯科(大阪市北区)院長・江上一郎先生。いったいどのぐらいの量の歯磨き剤が適量なのでしょうか。歯磨き剤の長所と短所と合わせてお話を伺いました。

■歯磨き剤の量は小豆粒大でOK

――歯磨き剤は、たっぷりつけたほうが効果的と思っていたのですが、違うのでしょうか。

江上先生 歯ブラシの端から端までいっぱいに歯磨き剤をつけている広告の映像や写真、イラストをよく見かけるでしょう。そんな必要はまったくありません。歯磨き剤を中性洗剤だとイメージしてください。洗濯機に洗剤を大量に入れたりはしないでしょう。それと同様に、口腔を清潔に保つには、歯ブラシ全体に歯磨き剤をつけるのは量が多すぎるのです。適量は、小豆一粒大、多くても5ミリ程度です。

――たくさん使用した方が泡立ちもよく、しっかり磨けるように思うのですが……。

江上先生 市販の歯磨き剤の多くは、泡立ちをよくするために合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)が含まれています。また、歯磨き後に口の中がさっぱりするように、ミントなどの香料も入っています。

歯磨き剤は短い時間で「洗った!」という感覚を得ることができるように作られています。広告でべたっとつけているのは、メーカーにすれば一度にたくさんの量を使ってもらったほうが売れるからではないでしょうか。

そのような使い方の実態は、化学薬品で口の中を泡立てている、人工の香料で口臭をごまかしているだけです。例えばミントの香りが強い、舌がピリピリといたく感じるなど刺激が強いほど、早く口をゆすぎたくなるでしょう。その結果、磨き残しがあるにもかかわらず、さっさと歯磨きを終わらせてしまいがちです。

――小豆一粒大の歯磨き剤で、きれいに磨けますか。

江上先生 口の中を清潔に保つために必要なのは、「だ液」です。歯磨き剤ではありません。合成界面活性剤入りの歯磨き剤を使用すると、強烈な洗浄力で一時的にだ液をも取りのぞいてしまい、逆効果なのです。口の中でだ液を保つことこそが、口腔衛生上最も重要なことです。

食べ物が口に入ってくると、だ液は消化を促す働きをしますが、同時に、歯や口の中全体を洗浄してくれます。

――歯の色素が定着してしまうのを避けたい、また、歯の表面をつるつるにしたくてついたっぷりの歯磨き剤を使ってしまいます。少量でもそれらの効果はありますか。

江上先生 歯磨き剤には研磨剤(リン酸水素カルシウム)が入っているので、磨くほどに色素は落ちます。コーヒーや紅茶などによって、歯が着色しているときには特に、有効と言えるでしょう。

ですが、研磨剤を使い過ぎた結果、削られた部分は細い神経が露出するので、知覚過敏を起こす可能性もあります。

色素の沈着を予防する、歯の表面の汚れを取るのも、だ液の力によるところが大きいと認識してください。

――では、歯磨き剤のメリットは何でしょうか。

江上先生 多くの歯磨き剤に含まれているフッ素の働きです。フッ素は科学的に唯一証明されているむし歯予防の成分です。日本で市販の歯磨き剤にフッ素が含まれるようになったのは1990年代の中ごろで、その時期からむし歯の患者さんが急減していることがそれを証明しています。

口の中は食事のたびに酸性に傾くため、歯の表面が少しずつ溶け出します。溶けた表面は、常に排出されているだ液のカルシウムが表面に付着(再石灰化と言います)していきます。再石灰化するときにフッ素が歯に取り込まれると、歯の表面には酸に強い物質(フルオロアパタイト)ができ、むし歯になりにくい歯にしてくれるのです。

――塩や水、指で歯を磨く人もいますが、方法としては適切でしょうか。

江上先生 正しい歯磨きの方法です。だ液への影響が少なく、また、指で歯ぐきのマッサージをすることでだ液は出やすくなるでしょう。

歯磨きで大切なことは、物理的清掃とも言いますが、「こする」ことです。歯磨き剤はあくまで補助的な役割だと考えてください。歯磨き剤は、適量を使えばむし歯を予防し、口臭を抑え、歯の汚れを落とすことができます。その効果を適切に発揮させるには、合成界面活性剤が含まれないタイプの歯磨き剤を選んで、少量ずつ使用することをお勧めします。

――ありがとうございました。

大きな勘違いをしたまま毎日歯を磨いていたことに気付きました。適量は小豆一粒大であること、だ液は優秀な歯磨き剤の役割があることを知っておき、適量を使うようにしましょう。


マイナビニュース1月28日
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by hayashi_shika | 2013-02-18 11:05 | 健康情報
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